小杉昌幸のブログ

プロフィール
小杉昌幸さん
1978年に工業技術院に入所以来、材料力学(博士号取得)や環境工学の研究を一筋に行い今に至っています。
1995年ごろからは危機管理のJIS化活動をベースに、環境リスクマネージメントの評価研究をスタートし、省エネ技術の導入推進を目指した「全体管理法」、定量化ツール、意思決定ツールなどを提案し、管理表の整理や診断などの研究協力を行っています。
このコーナーでは、省エネ化に着目し、研究成果に関連する情報をご紹介します。
研究成果については、以下のURLをご覧頂ければ幸いです。
http://unit.aist.go.jp/energy/safety/co2/index.html

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「省エネ・温暖化対策 主役は主婦!?」

省エネ対策は、燃料種の変更などの場合を除き、直接的に温室効果ガス削減に貢献し、さらに省エネルギー分のエネルギーコストが削減されます。このため、これらを総合的に考えるため、「広義のリスク管理」方法を考えました。

従来のリスク管理では、組織のマイナス要因を「リスク」の対象にしています。また、組織活動では活動利益を上げるための「経営」があります。これらを簡単に整理すると以下のようになります。

Ⅰ.プラス側面かつ定常的 = 「経営」

① 「事業」:組織のサービスや企業の製品提供

② 「品質」:サービスや製品の品質維持と保証

③ 「経済情勢」:定常的事業に影響する経済

Ⅱ.マイナス側面かつ突発的 = 
「リスク」

 ④ 「環境」:定常的環境対策と突発的環境インパクトへの対応

 ⑤ 「人的要因」:経営に対する内外からの突発的行為

 ⑥ 「事故災害」:自然災害や突発事故

 
◆温暖化対策としての省エネは、環境リスク対策のなかでも省エネルギーに伴うコスト削減の要素が大きく、経費削減が利益増と同義になるようなプラス側面をもっています。

◆この効果は継続的で大きいため、他のプラス側面と合算して評価すると総合的な効果を把握し易くなります。また、この対策は、その効果の重み付けを見極めつつ、計画的に導入できます。この管理・点検の考え方が「広義のリスクマネージメント」です。

 
◆他の「リスク」は突発的に対処するものが多くなります。また、「経営」の中でも、リコールなどの品質トラブルや円高などの経済情勢は、「リスク」側面になり、事前に想定できるものの同様の突発性を含んでいます。

◆これらをまとめると図に示すように表すことができます。
図の縦軸は上が定常的で下が突発性を表し、横軸は経済性を左がプラスで右がマイナスを表します。
例えば、図中右にブロックで示したように、売上
10億円、純利益1億円、エネルギーコスト1億円の企業活動を想定します。省エネ対策でエネルギーコストを10%削減すると、エネルギーコストは0.9億円になり、純利益が1.1億円になります。

◆省エネ対策無しでこの利益を上げるには売り上げを
11億円に伸ばす必要があります。このように総合的にみると、10%の省エネ対策は売上10%拡大と同じような効果を示します。これが「広義のリスクマネージメント」による効果の重み付け評価になります。

 ◆さて、家庭ではどうでしょうか。
「経営」は、一家の収入であり、働き手の健康維持管理です。「リスク」は、突発的な出費であり、将来の不安への備えです。家庭の主婦は総理大臣と大蔵大臣を兼務し、効果の大きさや費用の大きさをバランスさせて出費を重み付け管理し、赤字にならないように保険や蓄えなどのリスク対応もしています。

◆その中で効果的な経費の削減にも努め、折をみてはエコ車や節約エアコンの購入など効果的な省エネ対策を導入しています。まるで中小企業の社長さんのように、一国一城の主です。

主婦こそ日々これ「広義のリスクアセスメント」そのものかも知れません。このような重み付けを考慮したバランス感覚は、省エネの促進、ひいては温暖化対策の進捗に大いに役立つものと期待されます。





 

 

 

 

「もったいない」お話

 

 かつてケニアの大臣が提唱した「もったいない」という言葉が国際的にも注目されてきました。「もったいない」は、長持ちさせる、無駄を省く、むやみに新しいものに手を出さない、など多様な意味で使われてきました。「もったいない」の概念は装置や機器などを長持ちさせる場合は目に見える形で分かり易いですが、化石燃料などのエネルギーについては目に見えない形で消費されることも多く、分かりにくくなる場合もあります。

例えば、古いエアコンを使い続けるケースで考えてみます。我が国におけるヒートポンプ型技術の効率改善は目覚ましく、今のトップランナーのエアコンは10年前の40%以上、20年前の6070%の電力消費削減を達成しています。つまり、新しいエアコンに切り替えれば節電した分のエネルギー消費が目に見えないところで節約されることになり、エネルギーの「もったいない」使い方を解消していることになります。 


本来の「もったいない」精神は、このような機器の継続使用とエネルギー消費の削減を広い視野でバランスさせ、無理のない節約や生活環境維持と合理的に組み合わせていくことかも知れません。


 さて、どのようにバランスさせたらよいのでしょう。一つの目安として、機器購入とエネルギー消費の異なるものを同じ単位、つまりコストで比較する見方があります。このような考え方は「リスクアセスメント」の基本概念に近く、また、経済的な効果に着目すると「費用対効果(投資回収年)」の概念にも近くなります。


 先のエアコンの例で考えてみます。
10年前のエアコンをオフィスで冷暖房にフル稼働させて年間10万円の電気代がかかるとします。新しいエアコンを20万円で購入すると、年間の電力消費の40%節約に相当する電気代4万円分が節約され、約5年間の節約分で購入に投資した分を回収できることになります。

 このような場合、「投資回収年」が
5年と表され、それ以降の節約分は「省コスト」として維持され続けます。このように、エアコンを更新する技術対策を実施すれば、温暖化対策やエネルギー対策を進めるほか、中期的にはコスト削減にもつながります。


 また、このような場合、古いエアコンのいろいろな部品が家電リサイクル法で再生利用に回されて有効利用され、新しいエアコンの購入によって
40%の電力消費削減に相当するエネルギー消費が確実に節約されます。全体的に見ればこの方が「もったいない」に叶う可能性がでてきますし、経済的な効果を見てもコストの面でプラスにつながります。つまり、できるだけ早い機会を見計らってエアコンを更新する方が「もったいない」概念でもバランスすることになり、さらに、過剰な冷暖房を避けるような節約を徹底すれば鬼に金棒です。

「節エネから省エネへ」



この夏はピーク電力の
15%削減が求められており、また、石油など化石燃料の価格はここ1年で約1.5倍になっています。このため、いろいろなケースで節電やエネルギー消費の節約が期待されており、これを機会に徹底した無駄の排除や節約が見直されつつあります。また、「節エネ」の共通認識の高まりとともに削減目標の達成も期待されております。


 このような「節エネ」が達成された次のステップでは、経済活動の回復や拡大、生活環境の回復や向上、無理のない節約などが求められそうです。

 つまり、より効率的なエネルギー消費を達成する無駄のない「省エネ」推進の役割が大きく、これにより削減の着実な積み上げとともに効率化「省エネ」技術の発展も期待できそうです。


エネルギー消費の「節約」には、一般的に「がまん」と「技術対策」の二つの側面が考えられます。「がまん」は多少の不便さを伴うことも多く、それを日ごろから継続することによって「節約」を維持できますが、それ以上の効果の積み上げは困難な場合が多くなっています。

「技術対策」は機器の更新などで効率化するため最初に投資が必要ですが、その後は生活環境を維持したまま「節約」効果が継続されます。このため、エネルギー消費機器を段階的に効率の良いものに更新すれば、その効果も積み上げられます。他方、無駄の排除や機器使用の最適化などの「節約」は両者の中間的な概念かもしれません。


「技術対策」による省エネは大きく分けて
2つの側面が考えられます。
その一つは、既存の設備などをより効率的に使うための「運用やシステムの改善」、もう一つは、装置自体の効率化をはかる「技術更新」です。

前者では、無駄を省く手段として、設備機器を必要な出力に合わせて最適化使用する対策になります。

例えば、個別空調の集中管理や過剰な制御の見直しなどがあります。若干の付加装置を伴う改善では、例えば必要に合わせた出力の運転を行うインバータ制御や廃熱の利用なども挙げられます。


後者は、設備装置を更新する機会や新たに設備を設ける際に効率化に注目して装置仕様を検討する対策になります。いったん装置を導入すると
10年以上継続使用する場合が多いために大きな効果を持っており、このような対策は千載一遇の「節約」機会でもありますが取り返しのつかない機会でもあります。

 したがって、当初から「節約」や「効率化」を目指して管理することが大切になってきます。


 また、わが国では設備を更新する際の付加的な「省エネ」投資分を「省エネ」に伴う省コストの
5年分以下で回収できるような優れた技術が多く提案されています。

 例えば、日本が誇る
Hybrid車の技術は同型と比べて2倍以上の燃費向上が期待されており、車の切り替えの際に購入すれば通常とほぼ同じ設備投資で50%以上の燃料エネルギー節約を達成することになります。

 このように、世界的にもトップクラスの省エネ技術を有する我が国においては、築かれつつある「節エネ」の共通認識を大切にしつつ、機を逃すことなく効果的な「省エネ」を進めることが大いに期待されています。

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